わんぷり第6話は「こむぎ、いろはとケンカする」ということで、恒例の(?)ケンカ回。ふたりの絆を深める大切な回になると思われます。
おそらくこむぎの成長がメインとして描かれるであろうと思われつつ、一方でどうしてもいろはへ感情移入してしまう面があり、見方が難しい(描き方が難しい)な…と感じた回でした。
アバンでの「大事なものが欠けている」発言
まず、アバンでは前回捕獲したキラリンペンギンをニコガーデンへ納品。
その後、フレンドリータクトをこむぎが使えなかったことが話題になります。なぜ使えなかったのかという中で出たのが「プリキュアとして何かすごく大事なものが欠けているのでは」という発言。
あとはタクトを使いたいとひたすら主張するこむぎと、最後に困惑してしまういろは。
これらを以て、今回の話は以下がミソではないかと推測されます。
- こむぎに何か大事なものが足りない
- こむぎがひたすら自己主張をし、いろはが困惑している
つまり
- こむぎが自己主張ばかりではいけないということを学ぶ
という回となりそうです。しかもサブタイトルは「こむぎ、いろはとケンカする」ですし、前回いろはがタクトを使ったので今回はこむぎが使うようになるだろうということで、どう考えてもこむぎが主役(成長し変化する主体)であると思われます。
ということを念頭に置いて見ていきます。
こむぎの描写1:チョコちゃんとのやりとり
Aパート明けはチョコちゃんと乾さん。予防接種で病院に来て不安になっているチョコちゃんを、いろはがなだめます。
ちなみにめちゃくちゃ余談ですが「乾(いぬい)」は犬と関係ないだろと思ったそこのあなた、そんなことはないようです。乾は干支および方角を表す「戌(いぬ)」と「亥(い)」の間というのが由来となっているようです。
まあ、それは置いといて。
このシーンは、いろはがチョコちゃんをなだめられる力を持っているということ、もっと言うとチョコちゃんの気持ちをよくわかっているということが大切な部分なのかなと読み取りました。今までもいろはは動物たちと上手に対話してなだめてきたシーンが多くあったので新しいことは無いのですが、だからこそ今回においてこの設定がすごく重要なものであるのではないかと推測されます。
一方で、その光景を見て不満そうにし、気を引くかのように騒ぐこむぎ。
こむぎの真意はわかりませんが、何かモヤモヤするものがあったようです。
アバンと組み合わせると、動物のことをよく考えて共感できるいろはと、自分勝手に主張をするこむぎという構図が見えてくる気がします。
こむぎの描写2:役に立ちたいこむぎ
一旦まゆを挟んだ後はこむぎがいろはのお手伝いをし、役に立ちたいと言うシーン。
しかしいろはは手伝ってほしいことが思いつかず、ボール遊びや一緒に寝てほしいということでお茶を濁します。
ここではまず「お手伝いしたい」「いろはの役に立ちたい」とこむぎが主張するというのがポイントと思われます。が、こむぎがなぜそのような思考に至ったのかがわからず、ちょっと混乱してしまいました。
まず考えられるのは、日中のチョコちゃんとのやりとりにおいて、すごいねと言われ感謝されるいろはの様子を見た上でということですが、それでもまだわかりません。
タクトが使えるようになるまでに欠けているものが、いろはのように他人の役に立つという行動なのだという結論に至ったためでしょうか。または単にそうしてちやほやされるいろはが羨ましいから、というのも考えられます。ただいずれにしても、それであればまずはこむぎがその考えに至ったという描写が欲しい気がします。
そうではないとすると、単純にこむぎが自分勝手に主張をするだけという描写を重ねたかったというのもありえます。それであれば特にこむぎの心情変化を描くことなく登場しても違和感はありません。ただそれにしては、後半の戦闘でも出てくるように「いろはの役に立ちたい」という部分が回を通して強調されているため、そこに意味があるはずで、そう考えると違う気もします。
うーん、ここはわかりませんでした。
こむぎの描写3:散歩前にとうとうケンカ
さて、夜が明けて朝の散歩に行こうとウキウキのこむぎ。しかしふと玄関に行くといつものリードがありません。こむぎはいつものリードに強い思い入れがあり、それじゃないと嫌だという気持ちが溢れてしまいます。
そして大きな声を出してしまうこむぎと、どうしようもないと怒るいろは。とうとうケンカ開始です。
まず描きたかったであろうことを推測してみます。
ここまでの流れで、こむぎが自分勝手に主張しているという描写に重きが置かれている気がしたので、ここもやはり「いつものリードじゃないと嫌だ」ということに固執してわがままを言うということが重要そうです。そしてその感情を爆発させてしまったがためにケンカ状態になってしまった。
こむぎはどうしようもないこともあるという現実を受け入れる力を身に着けないといけない、というきれいな成長の物語のように思えます。
いろはに反省の余地を感じてしまう
ただこのストーリーにするにしては、ちょっと引っかかってしまうところがありました。というのも、こむぎが全面的に悪いと言い切れないように思えてしまったんですよね。
こむぎは今までの思い入れのあるリードじゃないと嫌だということで、しっかり尺を取って回想も入れて、視聴者がこむぎへ共感するような演出になっていました。一方でいろはは過去の思い出などはあまり囚われることなくあっさりとあきらめて、違うリードを探しに行きます。
こむぎに感情移入し、このシーン(回)においては「いろはが悪い」「自分が正しい」と思うように仕向けるのはとても良いかなと思います。その思いこそがケンカの根源だと思います。ただ冷静に考えてみると、過去の思い出をバッサリと切り捨ててこむぎの思いに寄り添うこともなく、一方的に言う事を聞かせようとしているいろはは、何も反省すべき点は無いのでしょうか?昨晩の「お手伝いしたい」というシーンもそうです。こむぎの思いをないがしろにして適当にあしらっていたようにしか見えません。
その後の悟とのシーンでも、こむぎとのケンカで悩むいろはが描かれます。いろはの気持ちを強く描くほど、いろはも学んで感情変化があり成長するのだろうと思えてしまいます。
実際、悟からもこむぎの気持ちをわかるように諭すようなセリフが出てきます。
さらにこの後の戦闘シーンにおいても、役に立ちたいというワンダフルの思いに寄り添うことなく、こっちに来るなと強く突き放していうように見えてしまいました。
これは、自分が親だから…?
ここはちょっとふわっとした仮説ではありますが、もしかして自分が子育てをしている身だから、必要以上にこむぎが悪いと決めつけきれないという思考が強まってしまった可能性も捨てきれません。
現実的にどうしようもないことに対して、子供が主張して聞かないというのは子育てにおいてよくあるシーンです。そういうとき、どうしても強く言って聞かせようとしてしまうことはあるあるだと思いますが、後になって考えると子供にはそのときに考える大事なものがあり親としてはそれに寄り添ってあげることが大事だったんじゃないかと思うことがよくあります。
実際、子供がやりたいことにちゃんと共感し、聞けるところは部分的に聞いて、代替案を提案して、という丁寧な対応をすると子供もスムーズに気持ちを切り替えてうまく行くということがよくあります。そう思うと、まさに今回のようにこむぎの言う事にうまく寄り添わずに強行しようとするいろはは、ダメな親である自分自身を傍から見ているようでとても他人事とは思えませんし、いろはこそ学ぶべきものがあると思ってしまいます。
ケンカ両成敗では成り立たない
ただし、いろはも悪いとなってしまうと今回の話がブレてきてしまいます。
- こむぎは自己主張が激しいので他人の気持ちも考えるべき。いろはも相手の気持ちに寄り添ってあげるべき。
- それが学べたら、ふたりとも成長できて、新しいアイテムも手に入りました。めでたしめでたし。
- あれ、ところでこむぎだけタクトが使えなかったのはなぜ…?
ということになってしまいます。
なので必ず「どちらかと言えばこむぎの方が悪い(欠けているものがある)」というところは譲れないはずです。しかしどうしてもいろはにも十分に悪いところがあるように思えて仕方がない…。ここは難しいところなのかなと思います。こむぎ視点に立つと一旦いろはを悪者にしないといけません。そうするほどこむぎへの感情移入がしやすくなります。しかし、いざいろは視点に立ってしまうとどうしても自省できる部分が見えてしまう。そうすると両成敗という形になってしまう。
大変難しいのですが、今回を上手く描くには、いろはに明らかな反省点が生まれないように十分にこむぎに寄り添っている(が、こむぎから見ると十分に思えない)という絶妙なラインを攻める必要があったのかなと思います。
その他:猫屋敷まゆとイケメンのパパ
今回もしっかりとまゆ様がご登場されました。今回はなんとパパ様も登場です。実は個人的に今回の話はこのシーンがとんでもなく素晴らしかったと感じました。
まず「いろはが友達」と母に言われて、照れるような困惑するような微妙な表情を見せるまゆ。
しかしそんなまゆに対して「まゆはそのままで大丈夫だよ」という言葉をかけるパパ。
「友達ってわけじゃ…」という発言に対して「そのままで大丈夫」というセリフ。パパめちゃくちゃかっこいいなと思いました。
(ここは脚本の技という面でも感動ものでした。セリフに振り回されることなく絶妙な行間を入れてのこの一言です。素晴らしい。)
普通は「友達できてよかったね」とかじゃないですか。そうじゃなくて、まだ「友達」と言い切れないまゆの様子を見て、学校も楽しみと言い切れないんだと理解して、昔からまだ変われていないということを感じ取って、しかしその上で「そのままでいいから」と声をかけるんですよ。めちゃくちゃ良いパパじゃないですか。
その前も、自分の好きな動物のことを熱く語っていますが、決して一方的に楽しんでいるわけではなく、楽しむパパの姿をまゆが喜んでくれることをわかってやってますよね。できるパパすぎませんか。
相手の気持ちを考えずに自分語りばかりして、娘の学校のことにも余計な口出しばかりしてしまって嫌われている、そんな全国のパパたちにはぜひ見習ってほしいものです。
まとめ
プリキュアの中でも大変重要なケンカ回ですが、非常に難しい回だなと思いました。
こむぎの成長を描く必要がありますが、丸く収めるにはいろはもある程度「こちらこそごめんね」と言えなければならず、かといっていろはよりこむぎの方が成長の幅が大きくないと「こむぎだけタクトが使えなかった」ことの解決にはならず、しかしこむぎに感情移入させるにはいろはは現段階では悪者に見えなければならず…という、どう描けばこの微妙なラインを達成できるのかという高難易度な回でした。
ただもしかしたら、私の見方が大きく影響し、いろは視点を強く感じ過ぎている可能性もあります。
そもそも描きたい方向性が推測とあっているのかどうかすらわかりませんが、次回に持ち越しとなるほど(そして脚本は再びシリーズ構成である成田氏であるという)重要回でもあるので、次回きれいにまとまることを祈って一週間楽しみに待ちたいと思います。
別の視点や解釈等があればぜひコメントいただけると嬉しいです。