らくだの感想ブログ

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わんだふるぷりきゅあ!第10話の感想:メッセージもセリフもとても綺麗な回

わんぷり第10話は「ユキの中の思い出」。ユキとまゆの出会いを描いた回でした。

今回は全体的にとても綺麗にまとまった素晴らしい回でした。アバンから早速流れるようなとてもスムーズな導入。余計なセリフも無く、しかし十分に今回の話の前提を伝える。「あ、これは期待できるぞ」とテンション爆上がりでした。

まゆの一押しはどれ?

まずオープニング開けではコミカルな描写とともに楽しいシーンが続きます。そして授業の合間(?)にまゆのデザインを見たみんなが「可愛い」「これ好き」と大絶賛。良いデザインができなくて悩むような回かと思いきやあっさり解決?…と、もちろんそんなわけはありませんでした。

家に帰ったときまゆは母にデザインを見せたところ、早速褒められつつも核心を突くセリフが出ます。

「まゆのイチオシはどれ?」

「せっかくならまゆの気持ちが一番こもっているものが良いな」

まゆはここで悩んでしまいます。友達にはどれも良いと言われたし、自分でもなかなか良いものが揃ったと思っている。けど、じゃあ自分が一押しで「これを作って使ってもらいたい」と思えるものはどれなのか?よく考えたらそこまでのものが無いように感じる…。まゆのデザイナーとしての未熟さを一瞬で見抜き、さらにそれをまゆが傷つかないように優しく、かつはっきりと伝える母。お父さんもそうでしたが、お母さんもなかなかの凄腕ですね。

まゆはその後も部屋に帰って改めて考えてみますが、いろはなど周りの友達がどれを好きと言ってくれたかを気にしてしまい、さらにユキにもどれがいいと思う?とまで聞いてしまいます。もちろんまゆ本人も半分冗談と思ってはいるのでしょうが、しかしどうしても他者からの評価を第一に考えてしまうところに、まさに母から指摘されたポイントが表れているように思えますね。

まゆの感性と美しいセリフ表現

今回はセリフ回しがとても上手く感じました。それだけではなく「きれいで素敵だな」と思える表現がいくつもありました。それは日本語のきれいさという点でもあり、それによるまゆの感性の豊かさが上手く表現されていたかと思います。

ユキの「きれいな」声

まず、まゆが初めてユキと話したとき、ユキが後ろから「にゃん」と声を発したときにまゆが「今の、あなたの声?とても…とってもきれいな声ね」と言うんです。これ、失礼なことを書きますがユキの声は決して「きれいな」声ではなかったんですね。私はなんだかやさぐれてぶっきらぼうな声のように聞こえたんですが、それをまゆは「きれいな声」と表現しました。

まゆはお世辞を言ったわけではなく、心からそう思ったんだと思います。それはまゆの性格を見ていればわかります。ではなぜあんなぶっきらぼうな声だったのにきれいと表現したのでしょうか。ここははっきりとはわかりませんが、おそらくまゆは表面的な声のトーンや声質ではなく、それを発したユキが心の奥底に持っている本当の優しさや上品さなどを感じ取り「きれいだ」と感じたのではないでしょうか。

そう言われたユキも首を傾げてしまうくらい自分でも意識していないのでしょうが、そんなユキの本当の「きれいさ」を感じることができるまゆのすごさを感じられるシーンでした。

「春のお花畑みたい」な帽子

まゆが寒そうなユキに対して帽子をプレゼントするシーンで、まゆは帽子の模様を「春のお花畑みたいでしょ」と言って紹介します。見た目はおおきな桜の花のような模様に見えるので「きれいなお花でしょ」という表現が素直かなと思いますが、そこで「春のお花畑みたい」というのもすごいなと思いました。これも単純に柄を見ているわけではなくて、その後の「お外は寒いけど、心はちょっとあったかくなるの」というセリフにあるように、その柄から感じる(または編んでくれたお母さんの気持ちを感じ取った上での)「春のお花畑みたい」という表現なんだと思います。これも表面上だけを見ずに自分の感性で物事が見えているまゆの素晴らしさが表れていて良いセリフでした。

その他

  • 今回のメインとなるまゆの成長と、ガルガルとの戦闘のつながりはやはりどうしても難しさがあるなと思いました。これは昔のシリーズからそうですが、今回は特に話のメインとなるキャラクターが戦闘に絡むことができない(人間が関与する余地が無いから)という特性から、この難しさが余計に際立ってしまう気がしました。ただ今回はその難しさを受け入れて開き直って一切まゆの成長と絡めることがないという、いっそそこまでしてしまうという脚本の腕が光っていたと思います。

まとめ

待望のまゆ回ということでわくわくしていましたが、想像を上回ってくる神回で大変感動しました。しかも単にまとまりのある回だったな〜というだけではなく、まゆの感性豊かな面がこれでもかと言うくらい上手く表現されており、そのまゆの心の綺麗さとセリフ回しの綺麗さ、話の中心であるプリティホリックの上品さなどもが相まって、全体がとても「綺麗」と思える回に仕上がっていました。これはもう奇跡と言って良いのではないでしょうか…。

またユキがとうとうプリキュアのことを目撃してしまいます。じわじわとまゆ・ユキの変身回が近づいていますね。ここまで焦らされてしまうと期待もどんどんと上がって行きますね。二人それぞれの変身回も素晴らしい回でありますように。

脚本:香村純子

演出:岩井隆央

作画監督:小澤 誠/片山敬介