らくだの感想ブログ

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わんだふるぷりきゅあ!第17話の感想:ユキの強さと危うさが入り交じる絶妙な表現の神回

わんぷり第17話は「私が、あなたを守る!」。とうとうキュアニャミーの正体が明かされた回です。

今回はキュアニャミーというキャラクターの表現、背景を想像させる意味深なセリフ、構図も動きも素晴らしい変身バンク、カッコいい戦闘シーン、などなど多方面で完成度の高い回でした。これは本シリーズの中でも屈指の回だったのではないでしょうか。

あなたは、そのままでいいの

個人的に今回の一番のシーンです。まゆがガルガルに襲われそうになり、ワンダフルもフレンディも間に合わない、絶体絶命のピンチ!というところでなんとユキが間に入り、しかも人間の言葉を話し、さらに人間に変身します。そこで放ったセリフ。

「あなたは、そのままでいいの」

振り向きまゆに語りかけるユキ

もう少し前後を書き出すと

まゆ「ごめんね、ユキ、私…」

ユキ「謝らないで。あなたは、そのままでいいの。困っている子を放っておけない、優しいまゆのままで。その優しさのせいで傷ついてしまうなら、私が、あなたを守る。」

普通に見ると、ピンチを救ったシーンでありユキ(キュアニャミー)の秘密がついに明かされるシーンであり、ああなんて感動的なんだ!という場面かと思います。

ただ私がどうしても引っかかったのが、「そのままでいいの」というセリフでした。

これ、実は第6話でまゆの父がまゆに対して言った「まゆはそのままで大丈夫だよ」というセリフとすごくよく似ています。このときは、引っ越したばかりのまゆがまだいろはを友達と呼んでしまっていいのか悩んでいるところに父がかけた言葉でした。まゆが焦ったり悩んだりしすぎないよう、無理に急いで変わろうと思わなくてもそのままでいればきっと良い方向に進んでいけるから大丈夫だよ、という思いのこもった、とても前向きで優しさの溢れる言葉でした。

一方、今回ユキが言った「あなたは、そのままでいいの」は、ちょっと感じる印象が違いました。素直に受け取れば、カルガモを無理に助けてしまうくらいの優しさはそのまま大切にしてほしい、それで危険が及ぶなら私が守るから大丈夫だ、という意味です。しかしもう少し抽象化すると、まゆは何も考えず自分のやりたいことをしていればいい、危険はすべて取り除いてあげるから、とも解釈できます。

また、今までのユキのまゆに対する言動を踏まえてさらに深読みすると、まゆはガルガルと関わることのない世界にいればいい、守っていてあげるから危険に近づくことなく生きていけばいい、というメッセージにも思えます。

優しい言葉のようにも取れますが、なんだか、過保護で過干渉な親が子供にかける言葉のようです。危険から遠ざけ続けてあげるよ、というのは言ってしまえばいわゆる "優しい虐待" と言われるものではないでしょうか。

この、すごく感動的なシーンでここぞというところにこの一言を入れることで、感動とある種の違和感を同時に感じる、ユキの美しさと強さの中に危うさが混じっている、安心してこの人に守られていたいと思えるが一方で身を委ねきってしまうことに一抹の不安がある、という複雑な感情を抱くとても独特なシーンだと感じました。

また、第6話のまゆの父とほぼ同じセリフでありながらここまで印象が変わって見えるというのも今回見ていて感動したポイントでした。本当にまゆの幸せを考えている父と、優しさのように見えてまゆを不幸にしてしまいそうな危うさを感じるユキ、その対比がこの同じような一言に凝縮されているという素晴らしい表現です。

第6話での父のとのやりとりの素晴らしさについては以下の最後にまとめています。

rkd3.hatenablog.jp

また、今回は赤ちゃんツアーを通していろいろな親子の形を見てきて、昼食時にあったようにまゆがユキを子供のように感じて助けてあげたというような印象を持つやりとりもありましたが、逆にここではユキが親としてまゆにどう接するかという構図にも取れるようになり、面白い設計をするなと思いました。ちなみに今回のアバンではまゆの母が「まゆがユキの母というより、ユキがまゆのお姉さんだ」というツッコミがありましたが、ここの伏線だったとも取れるかなと思います。

今後、ユキがまゆを一人の人間として接することができるのか、まゆがユキから自立していくことができるのか、そしてそれらがどう表現されるのか、とても楽しみです。

私、寒かったんだって

もう1つのお気に入りシーンが、キュアニャミーが単独でガルガルと戦うシーンでの独白です。その中で以下のセリフがありました。

まゆ、私はずっと一人で平気だと思ってた

でも、あなたに出会って気づいてしまった

私、寒かったんだって

ほんとはずっと寂しかったんだって

まゆにもらった帽子で温まるユキ

「寒かった」ことに気づいた、って、なんて美しい表現でしょうか。このセリフを直接読めば「寒かった」だけです。雪が降る中で1人でいたのでそれは寒かったでしょう。と、もちろんここで表現したのはそれだけではなく、体の寒さと同時に心の "寒さ" もあったということですね。つまり一人で寂しかったことに気づいた、それをまゆに気付かされたと同時にまゆといることが心が温まるような体験だった、ということです。

10話のときもまゆのセリフにはこういった趣のある表現が多用され、まゆの感受性の豊かさが上手く描写されていました。偶然なのかあえてなのかわかりませんが、ユキも当時のことをこう表現したというのが、まゆと同じように豊かな心を持っているのか、そのときのまゆの心を受け取った結果なのか、ともあれとても良いなと思いました。

第10話の "綺麗さ" については以下にまとめています。

rkd3.hatenablog.jp

あのとき、あの場所で出会ったから

またキュアニャミーの独白ですが、以下のセリフがありました。

あの時、あの場所で出会ったから、、、私達、友達になれたのよ

かなり長い尺で溜めて溜めてのセリフだったので、とても重要なものであると思われます。しかし残念ながら私にはちゃんと理解しきれませんでした。

直前のセリフや映像を合わせて考えると、これはまゆが昼食でいろは達に話していた「もっと早く会えてたならユキに寒い思いも寂しい思いもさせずに済んだのに」という言葉を踏まえてのものです。そこから考えると、あのとき出会ったからというのは、ユキが赤ちゃんじゃなく一人前だったからという意味かなとも考えられます。しかし、それは「友達になれた」という発言とはちょっとズレます。赤ちゃんでも友達にはなれますよね。赤ちゃんだとまゆを守れないからというならわかりますが、まゆを守りたいと思ったというのは雪の中で助けられて一緒にいたいと思ったというのとは別ではないかと思います。

かつ、「あの時」だけではなく「あの場所」とも言っているので、場所も重要なわけです。

これはだいぶ妄想が入りますが、ユキが最初は人間嫌いだったことと、さらに前回の動物と人間の対立という話があったことから、もしかしてユキは人間と対立する動物側の勢力と関係しているのではないでしょうか?動物側だったから人間嫌いであり、しかし何かその勢力と距離を取ったからまゆ(人間)と友達になっても問題がない状況だった、と考えると辻褄が合います。

とはいえ、これはあまり材料が無い中での推測なので、引き続き今後の種明かしを楽しみにしたいです。そもそもユキやこむぎはそれぞれどこから来たのか、ハートマークにどういう意味があるのか、ニコガーデンとの関係性、などなどわからないことがいっぱいですね。

その他のシーン

ちょっと熱が入りすぎて書ききれないので、以降は気になったポイントについてそれぞれサラッと書きます。

驚愕の変身シーン

気合い入りすぎじゃないですか?動きもかっこよく美しい、構図も独特で、こんなド派手でアガる変身バンクが今までにあったでしょうか(最近のシリーズを見ていないのであれですが)。

あと、今回の変身は本人がCGで描かれる場面が多かった気がしましたが、これも珍しいような?もしかして初めてでしょうか?ここも新しいなと感じました。

各々の料理

昼食のときにそれぞれが弁当を披露するシーンが、地味に各キャラクターを上手く表現していて、いいなと思いました。

まず悟くん、しれっと弁当を広げましたけど、絶対何日も前から(いろはのことを)考えて準備してきましたよね。

弁当を披露する悟

一方いろはの壊滅的なおにぎり。でもいろは本人は多少照れつつもとても前向きなのがいろはらしくて好印象でした。

いろはの作ったおにぎり

またまゆの作ったクッキーはシンプルなアイシングクッキーでした。中学生が頑張って手作りした感がとてもリアルで可愛いですね。でもちゃんとこむぎの分も用意してくるところが気を使えるまゆの良い所が表れていました。

けって〜い!

赤ちゃんツアーに出発するとき、いろはが掛け声をかけるシーンがありました。なんだかプリキュア5ののぞみの「けって〜い!」を彷彿とさせるシーンでした(考え過ぎでしょうか)。

ツアーに出発するいろはたち

まとめ

今回はキュアニャミーの正体がユキであることがついに明かされる回でした。そしてその重要な回にふさわしい、とても完成度の高い回でした。まだまだユキについてもわからないことはたくさんあります(どこから来たのか?なぜプリキュアになったのか?など)。またユキがここからどう成長していくのか、まゆとの関係性がどう変化していくのか、ということも非常に気になります。しかも次回は早速ユキとまゆそれぞれの思いがぶつかりそうなタイトルではありませんか。重要な回が続きますので気を引き締めて(?)見ていこうと思います。

脚本:井上 美緒

演出:上田 華子

作画監督:爲我井 克美

美術:戸杉 奈津子