2024年の劇場版プリキュアである「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!」の感想です。
ネタバレが含まれる可能性がありますので、未視聴の方はご注意ください。また本ブログでは全般的にポジティブな感想だけを書くとは限りませんので、苦手な方は読まないことをおすすめします。
良かったところ
まずは今回の映画を見て良かったと思った点をまとめます。
前半の飽きさせない工夫
前半でゲームに吸い込まれた直後からこむぎがゲームをどんどんと進めていきます。その中では歌を取り入れたりダンスをしたり、観客を飽きさせない工夫がされていましたね。またフォーカスされていた玉入れは子供にとって幼稚園などの運動会でも馴染みのある競技であり、理解しやすく見やすかったのではないでしょうか。プリキュアは低年齢がメインターゲットではありますが、そうすると長時間画面を見続けているのが苦手な子もいます。そんな中で今回は上手く話や展開に変化をつけつつ子供があっと思うような歌や踊りを取り入れており、上手く集中を促す構成になっていたのではないでしょうか。
フルCGで進む本編
ゲームの中の世界はまさかのフルCGでした。しかも、あの質感と等身は、個人的には2015年のプリンセスプリキュアの映画で同時上映された「キュアフローラといたずらかがみ」を彷彿とさせます。
大変懐かしいですね。昔は短編でしたが今回は本編でこれだけの長さをCGで描いており技術の進歩を感じました。またゲームの中という設定と上手くマッチしていたのも良かったです。
後から調べてみると、今年の映画のCGディレクターの方がまさに「キュアフローラといたずらかがみ」でもCGディレクターをされていた中沢大樹さんでした。具体的にどれほどの影響があるのかはわかりませんが、やはりある程度の関連があるんだろうなと納得です。
ひろがるスカイのアガる戦闘シーン
前半ではゲームの前で応援しているだけだった先輩プリキュアたちが、終盤でとうとう合流しました。そこで感じたのは「ひろがるスカイの戦闘がかっこいい!」。
今年のプリキュアは激しい戦闘シーンが少ないこともあり(荒れていたころのキュアニャミーくらい?)、余計に熱い叫び声と共に敵に殴りかかるひろがるスカイメンバーの姿は見ているこちらもテンション爆上がりでした。あそこだけもはや別作品でしたね。わんだふるも魔法つかいも殴らない中で、元々武闘派のひろがるスカイ勢はかなり異色でインパクトが絶大でした。
いやー、やっぱり戦闘ほしいなあ。
ユキや大福の登場シーン
細かい話ですが、こむぎが一匹でゲームをしていて失敗しそうになったとき、ユキが華麗に登場して助けてくれました。なかなかカッコいいシーンだったなと思います。また聞いたことの無いイケメンボイスとともに登場した大福。これもなかなかのインパクトです。どちらもペットの登場というところで良い演出がされていました。他にもちょっと笑いを誘うようなシーンがあったりして、演出という面では結構力が入れられていたのかなと感じました。
残念なところ
次に映画を見ていて残念に感じた点をまとめます。
敵の心情がわからない
敵のボスであるムジナは一貫して面倒を見てくれる人間を欲していました。そしてことあるごとにこむぎに対して、飼い主と一緒に永遠にゲームの中にいればいいとささやきます。しかしそれを一蹴するこむぎ。この2つの立場の対立が今作の全体を通した構図であったわけです。しかしそんな中で気になる点が2つ。
まず1つ目に、なぜムジナが面倒見の良い人間を欲していたのか、それが謎でした。ムジナは元々はゲームの作者であるナツキが、幼少期に出会ったタヌキをイメージして作ったキャラクターです。とするとナツキの思いまたはナツキが思うタヌキの思いが込められていると考えるのが自然です。しかしどう考えてもなぜ「ムジナが人間に愛されたい」という欲望を膨らませるという結果につながるのかわかりませんでした。
これは推測ですが、ムジナにはナツキの思いが込められていたのではないかと思います。それは、幼少期に仲良くなったタヌキが公園の閉鎖という急な環境の変化によって会えなくなったという原体験から来るものです。つまり、環境の変化の無い世界で永遠に一緒にいたいという思いが込められてしまい、それが徐々に成長し増幅されてしまったのだと。そう考えればムジナがひたすらゲームの中でずっと飼い主と一緒にいればどうかと言っていたこととも繋がります。
とはいえ、ナツキは公園が壊されて会えなくなったということは言っていましたが、公園が無くならなければよかったとか、環境の変化を憎んだとか、そういう描写はありませんでした。もし上記の推測が正しいのであればもう少しナツキまたはムジナによって公園の件と結びつけるような発言があった方がよかったと思います。
しかし仮にその上でも、やはりムジナがなぜただ単に面倒見の良い人間を欲していたのかという答えにはなりません。だいぶこじらせて飛躍してしまっています。その間を埋める論理をもう少し作中で組み立てておく必要があったと思います。
2つ目に気になったこととして、ずっとゲームの世界にいればいいというムジナに対するアンサーとしてのこむぎ側の主張が弱かったというのが残念でした。終盤ではこむぎはもっといろはと一緒に散歩したり喧嘩しても仲直りしたり、いろいろな経験をして年を取っていくんだということを言っていました。一見すると感動的な泣かせるシーンですね。
しかしよく考えるとそれまでにいろんな経験を積むという系統の話は出てきませんでした。またムジナ側の主張にも新しい経験なんていらないんだという主張もありませんでした。あまり噛み合ってない上に根拠も弱いこむぎの主張がここぞという盛り上がりの場面に釣り合わない大変残念なものになってしまいました。
もしこれで行くなら序盤にてこれからも一緒にいろんな経験をしたいとか年を取ることを彷彿とさせる会話をするとか、が必要だったのではないかと思います。またムジナの発言にも、一緒に年を取るなんて必要ない無駄なことだというような、直接否定するような主張があった方がよりお互いの論理の噛み合わせが良くなったのではないかと感じました。
いつでも助けに行く…わけではないいろは
映画の冒頭でいろはたちがゲームをしているとき、こむぎを模したキャラが暗い地の底に落ちてしまうシーンがありました。こむぎはゲームに没頭するあまり自分が落ちてひとりぼっちになってしまったかのように悲しい気持ちになります。そんなこむぎに対していろはが優しく声をかけて慰めます。そのときいろはは、いつでもそばにいる、いつでも助けに行く、という旨の発言をしていました。ドタバタのゲームのシーンから一転した非常に印象的なシーンです。
そしてストーリーが進んだ終盤、敵に弾き飛ばされた大事な鍵を追いかけてこむぎがジャンプすると、なんとこむぎはゲームでも実装されていないバグの空間に落ちてしまいます。出口は遠く暗くて恐ろしい場所。まさに映画冒頭のシーンと同じシチュエーションですね。ここでこむぎは諦めるかと思いきや、強い意思を持って遠い出口に向かって行きます。そしてそれを感じ取って応援するいろは。まわりや劇場のみんなに呼びかけてこむぎを助けます。
大変良いシーンなのですが…「いろはが助けに行くんじゃないんかい」と思ってしまいました。そこは冷静に人頼みなんだ、と。まあいろはらしい的確な判断だとは思います。が、冒頭にあそこまで感情に訴えるように熱く助けるという言葉をかけておいて、終盤の盛り上がりのシーンでは冷静に確実に助けるというのがちょっとチグハグ感があり、そこはもうちょっと熱く助けに行ってほしいなと思ってしまいました。
どうでもいいコメント
最後に、良いとも悪いとも言わない、単に書いておきたいコメントです。
MacにWindowsキーボードをつなぐナツキ
ナツキがゲームのプログラミングをしている画面が何度も登場しました。メールの通知やウインドウ左上のボタン、画面上に固定されたメニューバーなど、よく見るとmacOSの画面そのものでした。私も普段からMacを使っているので大変馴染みのあるUIです。そんな中、ナツキが操作するキーボードが映ったときに目に入ったのが「Enter」の文字。
なるほど。OSはMacだけど、キーボードはWindows向けなのかな?
私も厳密なことは言えませんが、Apple純正キーボードや有名メーカーのMac向けキーボードは、あの位置のキーは "↵" か "Return" と書かれるのが一般的です。Mac内部でもあのキーはReturnと呼ばれることが多いと思います。逆にWindows向けキーボードではそこに "Enter" と書かれることが多い印象です。
別に何も悪いことはないのですが、そこはMac向けじゃないんだな、と思っちゃいました。まあWindows向けの方が種類もいろいろありますし安く手に入ったりしますしね。多少キーが違いますがキーマップを変えることもできますし、基本的に困ることは無いと思います。個人の嗜好に文句をつけてしまってすみません。
魔法つかいプリキュア!
今回は先輩プリキュアとして「ひろがるスカイ!プリキュア」と「魔法つかいプリキュア!」のキャラクターが登場しました。ひろがるスカイは去年放送なので多くの子供達にとって親近感のあるプリキュアだったかと思います。
一方で魔法つかいプリキュアは…?
2016年放送なので、今から8年前。なるほど、現在3〜5歳くらいの子供を持つ、社会人7~8年目くらいのお父さんが大学時代に見ていたプリキュアですね!これはたしかに熱いセレクトです。青春時代の思い出を彩るキュアップ・ラパパ。モフルンが魔法を使ったシーンで涙したお父さんは多いのではないでしょうか。子供にも大人にもサービスしてくれる、さすがの東映アニメーションですね。
まとめ
今作はゲームに入ってしまうという展開からフルCGになり、楽しいシーンも多くあり、しかし一貫してわんだふるぷりきゅあ!らしい動物と人間の絆に関する感動のストーリーでした。
ただ個人的には話の一貫性や論理構成のようなものをすごく気にするタイプなので、その観点で見るとムジナの主張やナツキの思い、こむぎたちの主張などが上手くマッチしていなくて、なんだかしっくり来ない話だったなと思ってしまいました。
これくらいの感想文ですら面白い構成にできないくせに何言ってるんだという感じですね。もちろん "言うは易く行うは難し" ということはわかっていますが、その上での批評ということで大目に見ていただいて。今後も引き続きプリキュアを楽しませてもらおうと思います。